2025年7月11日 土射津 昌久 氏: 特異モード展開汎関数くりこみ群法によるスピン・電子ネマティック・超伝導ゆらぎの干渉効果の解明

特異モード展開汎関数くりこみ群法によるスピン・電子ネマティック・超伝導ゆらぎの干渉効果の解明

土射津 昌久 氏
Masahisa Tsuchiizu
奈良女子大学

2025年7月11日(金) 13:30~ 理学館614

 電子ネマティック状態は、銅酸化物高温超伝導体や鉄系超伝導体などの2次元強相関電子系において、大きな注目を集めている[1]。その理論的記述には、高次の多体相関効果を取り込む必要があり、現在、多体相関効果をバイアスなく無限次まで取り込むことが可能な理論体系として汎関数くりこみ群(fRG)法が知られている[2]。

 本研究では、従来のパッチfRG[1]とは異なるfRGの定式化として、特異モード展開汎関数くりこみ群(SM-FRG)法[3]に着目した。SM-FRG法では、2体の相互作用バーテックスを、構造因子を基底とするスピン・電荷・超伝導の自由度に関する有効相互作用に分解し、この有効相互作用に対してくりこみ群法を定式化する。これにより、くりこみ群方程式において、乱雑位相近似で扱う部分と、揺らぎの干渉効果を記述する部分に分離することができ、揺らぎの干渉効果に関して明確な物理解釈を与えることが可能となる。

 我々は、このSM-FRG法を発展させ、銅酸化物高温超伝導のモデルに適用し、構造因子について最適化された一般化感受率の解析を行った[4]。その結果、スピン揺らぎと電子ネマティック揺らぎの干渉効果を適切に記述することができ、電子ネマティック揺らぎの増大を再現できることを確認した。また、従来のパッチfRGと比較して、計算の安定性が向上し、フィリング依存性等の議論が可能となった。講演では、SM-FRG法の詳細と、その有用性について紹介する。

[1] R. Tazai, Y. Yamakawa, M. Tsuchiizu, and H. Kontani, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 111012 (2021).
[2] W. Metzner, M. Salmhofer, C. Honerkamp, V. Meden, and K. Schoenhammer, Rev. Mod. Phys. 84, 299 (2012).
[3] C. Husemann and M. Salmhofer, Phys. Rev. B 79, 195125 (2009), W. S. Wang et al., Phys. Rev. B 85, 035414 (2012).
[4] K. Imai, S. Asai, and M. Tsuchiizu, in preparation.