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β"型BEDT-TTF化合物における超伝導状態の理論研究

清水 真 氏
Makoto Shimizu
岡山大学 自然科学研究科

2022年11月11日(金) 10:30~ 理学館506

強相関電子系で出現する非従来型超伝導の特色は、その多様性にある。 結晶中の元素を置き換えることで何通りもの物質を作ることができ、 圧力等の外的パラメーターによって電子相関を制御することもできる。 このようなバリエーションに対して、常伝導状態・超伝導状態のどちらも多彩な相図を示す。 特に超伝導に関しては、幅広い転移温度、そして多様な超伝導対称性を見せる。

β"型の結晶構造を持つ有機電荷移動錯体β"-(BEDT-TTF)2XXは硫化物イオン)もまた、 硫化物イオンXのバリエーションによって多彩な基底状態を示す。 例えば、β"-(BEDT-TTF)2SF5CH2CF2SO3Tc = 5K以下で超伝導を示し、 さらには、FFLO超伝導状態が実現しているとの報告がある。 また、β"-(BEDT-TTF)2SF5CHFCF2SO3では、温度変化によって金属--絶縁体が見られる。 なお、β"型の化合物の中で超伝導の発現が確認されているのは、 前述のβ"-(BEDT-TTF)2SF5CH2CF2SO3のみである。

上記のようなβ"-(BEDT-TTF)2Xの多様な性質を微視的に理解することが本研究の目的である。 本研究では、全電子密度汎関数理論を用いて各物質の電子構造を計算し、 BEDT-TTF分子から成る4サイト・タイトバインディング模型を作成した。 続いてゆらぎ交換(FLEX)近似を適用し、スピン感受率および電荷感受率の計算、さらには、 得られたスピンゆらぎを媒介として線形Eliashberg方程式を解き、超伝導状態の解析を行った。

結果として、β"-(BEDT-TTF)2SF5CH2CF2SO3では、 他のβ"型化合物と比較して小さなスピン感受率を得た。 このことはβ"-(BEDT-TTF)2SF5CH2CF2SO3のみが超伝導を示すという実験事実と よく一致していると考えられる。 さらに、線形Eliashberg方程式の最大固有値解として、拡張s波の超伝導対称性を得た。 本セミナーでは、以上のような結果の詳細について議論する。