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Sc研に興味があるみなさんへ

 私たちが日々研究する金属電子系では、量子力学の不確定性原理(ΔxΔp ~ ℏ)がもたらす大変不思議な物理現象が生じます。その一例は「超伝導」です。超伝導とは、電子ごとにバラバラな波動関数の位相(θi≠θj)が突然一つに定まる相転移です。2つの電子が量子力学的な束縛状態を形成する結果、位相が自然に揃います(図1)。超伝導とは、「位相に関する対称性の自発的破れ」であり、このとき減衰しない永久電流やマイスナー効果が生じます。Sc研では、こうした自然界の謎の解明に日々取り組んでいます。過去の研究成果の多くは、実は大学院生が第一発見者です。研究室内外の教員や院生仲間(先輩、後輩を問わず)と日々議論を重ねる中で、巡り合った重要な手がかりを必死に捉えて、発見をつかみ取りました。修論の研究テーマを教員と相談して決めた後に、(頑張り次第で)そのテーマでは先生を超えて、早期に学会で存在感を発揮し始める先輩が、過去たくさんいました。Sc研には、それを可能にする伝統と実績に基づく環境があり、我々はその手助けをしたいと願っています。

図1:温度を下げると有効引力が増大し、クーパー対が生じて超伝導になります。クーロン斥力が引力起源である「非従来超伝導体」は、銅酸化物高温超伝導体や鉄系高温超伝導体をはじめ、現在の物性物理学の中心的課題です。

 次に、大学院での学習内容をご説明します。

卒業研究の概要

 前期は凝縮系理論の標準的な教科書を、教員を交えて輪講し、量子多体論の基礎を習得します。参加者全員で議論を重ねて正解に到達する経験は、その後の貴重な糧となると思います。

教科書の例:
 “Statistical Mechanics: A Set of Lectures”, R.P. Feynman: 量子統計力学、第二量子化

 後期には、豊富なテーマの中から興味のある課題を選び、指導教員と共に入門的な研究活動を行います。研究成果を卒業論文にまとめて、卒研発表会で発表します。

教科書の例:
 「統計力学」 阿部 龍蔵(東京大学出版会): 場の量子論の導入、グリーン関数
 「超伝導入門 (上,下)」M. ティンカム(吉岡書店): BCS理論
 「固体の電子論 」斯波 弘行(丸善): 電子相関の基礎

卒業研究の例:
 「クーロン斥力による非従来型超伝導の理論」
 「銅酸化物高温超伝導体におけるスピン揺らぎ理論」
 「強磁場下ディラック電子のランダウ量子化」


大学院の概要

 毎週の研究室セミナーで研究の議論を行います。 また外部から講師を招く集中講義やコロキウムを開催します。 さらに「Sc研夏の学校」に向けて教科書を選び、学生主体で輪講を進めます。

 加えて修士一年では、場の理論を扱った教科書を選び、教員を交えて一年間輪講します。これにより、研究に必要な知識を自然に身に着けることができます。

教科書の例:
 “Quantum Theory of Many-Particle Systems”, A.L. Fetter & J.D. Walecka: 場の量子論
 “Theory of superconductivity”, J.R. Schrieffer: 強結合超伝導の理論
 「強相関電子系の物理」 佐宗哲郎(日本評論社): 電子相関の理論、輸送理論

 修士課程の入学後に、皆さんが興味を持つテーマに基づいて、修士論文の課題を決めます。 必要に応じて数値計算の指導も行います。研究会や日本物理学会における研究発表や、英文学術雑誌に論文を掲載することが可能です。

 博士課程では、指導教員や内外の共同研究者と協力しつつ、いよいよ学生主体で最前線の研究領域を開拓します。 英文論文を執筆し、国際会議で発表する機会が増えます。「学振研究員」に申請して採択されると、研究奨励金と研究費が支給されます。 Sc研の学生は高確率で学振研究員に採択されてきました。研究で活躍したい人は是非Sc研に来てください。

入試情報

 興味のある方はぜひ入試説明会に来てください。3年生以下の学生も歓迎します。

大学院博士課程(前期課程)の募集について 

名古屋大学大学院理学研究科では、研究・教育のさらなる充実と発展のため、 令和4年4月からの専攻再編を目指して文部科学省に認可申請しております。 そのため、本年度の募集開始時期と入試日程は例年と異なります。 随時、物理教室ホームページにて最新情報をご確認ください。

2025年度入学 入試日程
入試説明会 2024年5月25日
自己推薦入試 決まり次第掲載します
一般選抜入試 決まり次第掲載します

[ 物理系教室説明会に関して ]

 全体説明会の後の研究室訪問の際に、Scグループの詳しい紹介を行います。 説明会の詳細は 物理学教室HPの説明会案内をご覧ください。 物理教室説明会に出席できない場合は、個別に対応致します。

[ 自己推薦入試に関して ]

 受験を希望される方は、入試説明会にご出席ください。受験の際には必ず、下記連絡先に事前にメールでご連絡ください。自己推薦入試の詳細は物理学教室HPの自己推薦案内をご覧ください。

[ 一般選抜入試に関して ]

 受験を希望される方には、入試説明会への出席を推奨します。 一般選抜入試の詳細は物理学教室HPの一般選抜試験案内をご覧ください。 一般選抜入試の過去問題集もこちらに掲載されています。

物理学教室発行の研究室紹介パンフレット(pdf)


最近の入学試験状況

 Sc研はこれまでに様々な大学の出身者を受け入れてきました。 学内・学外を問わず、意欲ある皆さんの応募を期待しています。
  自己推薦入試 入学者数 一般選抜入試 入学者数* 全入学者数* 
入学年度 学内 学外 学内 学外
 2023年度 0 1 1(1) 1(1) 3(3)
 2022年度 2 1 1(1) 0(0) 4(4)
 2021年度 1 2 0(0) 1(4) 4(7)
 2020年度 0 4** 0(0) 0(1) 4(5)**
 2019年度 1** 4 1(1) 0(2) 6(8)**
 2018年度 1 1 0(0) 0(3) 2(5)
 2017年度 0 2 1(1) 0(1) 3(4)
 2016年度 3** 0 0(0) 0(0) 3(3)**

*括弧内は合格者数
**秋季入学者を含む


大学院生からのアドバイス

  • 私は他大学から名古屋大学の一般選抜入試を受験し、物性理論研究室に所属しています。学部生のときに行った銅酸化物高温超伝導体の実験で物性物理学に興味を持ったことがこの研究室を選んだ理由です。大学院進学当初はなにもわからない状態からのスタートでしたが、研究を通してわかること、できることが少しずつ増えていきました。この分野に興味を持つきっかけとなった銅酸化物高温超伝導体の超伝導発現機構を理解したり、最新の論文の内容が少しずつわかるようになったりと、自分の成長を感じています。研究はいつもうまくいくとは限らず、間違えては悩むことの繰り返しですが、自分の研究で世界の誰も知らない問題の答えを見つけたときは、他の事では味わえない達成感があります。現在は、助けを借りながらも自分で研究が進められるようになりました。自分が成長できたのは所属する研究室に学ぼうとすれば、それに応えてくれる環境があるためだと感じています。質問をすれば答えてくださる教員の方々、先輩、後輩関係なく議論できる雰囲気など、とても恵まれた環境が整っていると思います。やりたいことが具体的に決まっている人も、そうでない人も「やる気」さえあれば充実した研究生活が送れると思います。
    [博士課程(前期課程) 2年]

  • 私は学部3年生で習った量子力学と統計力学に興味を持ち、理論的に超伝導物質や強磁性がなぜ存在するのか研究したいと思い、その旨を自己推薦書に書きました。研究室では物性理論を専攻しており、現在コバルト酸化物の物性を研究しています。院生になると学部生のころと比べて、自分の興味のある専門的な内容を研究できます。また自分一人で研究を進めるわけではなく、週に1度同じ分野で集まり、セミナーをおこない研究内容の問題点を明らかにしたり、内容を深く理解するため議論を行っています。他にもコロキウムで他大学の研究者の自分のテーマとは異なる内容の講演を聞いたりして物性物理を広く知ろうとしています。このように院では研究室の先生及び学生同士で活発なコミュニケーションをとっているため、いままでよりも深く物理を考えるようになりました。充実した毎日を送っています。
    [博士課程(前期課程) 2年]