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多軌道系超伝導体の対称性の分類とその応用

野本拓也 氏
Takuya Nomoto
京都大学大学院 理学研究科

2016年4月28日(木) 13時30分 理学館614

 電子の持つ軌道自由度に対する理解は近年の鉄系超伝導体の研究を通して急速に進んでおり、その超伝導対称性や発現機構に与える影響が詳細に調べられている[1,2]。一方で多軌道系における超伝導対称性の一般論自体は少なく、とくにスピン・軌道に依存した複雑な電子構造を持つ重い電子系超伝導体の微視的な理解はあまり進んでいない。

 最近、我々は重い電子系超伝導体であるUPt3の超伝導対称性を、第一原理計算にもとづいて解析し、その結果E2u表現という対称性に属するギャップ関数を得た。このギャップ関数は回転磁場下における熱伝導度と比熱の両方の実験結果を自然に説明できるというだけではなく、バンドごとにノードの入り方が異なるという変わった構造をしている。特に小さなフェルミ面に入るノードは、電子のスピンだけでなく軌道自由度も考えることではじめて生じる特殊なノードであり、従来の異方的超伝導の研究では考慮されていなかったものである[3]。

 この結果を受けて、我々は多軌道系超伝導体の超伝導ギャップ関数を一般的に分類することを試み、その結果をもとに軌道や多極子揺らぎの絡む超伝導の対称性や発現機構を、平均場近似の範囲内で解析した。本講演ではUPt3に関する我々の結果を紹介したあと、多軌道系超伝導ギャップの分類とその性質について議論する予定である。

[1] M. Daghofer et al., Phys. Rev. B 81, 014511 (2010).

[2] S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 109, 137001 (2012).

[3] M. Sigrist and K. Ueda, Rev. Mod. Phys. 63, 239 (1991).