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金属系におけるスピンホール効果の理論

田中拓郎 氏
akuro Tanaka
名古屋大学 大学院理学研究科

2011年4月22日 10時30分 理学館614

近年、量子スピンホール効果やマグノンホール効果を初め、電荷自由度以外の輸送現象が注目を集めている。その中で私はスピンホール効果(SHE)、特に金属系におけるSHEの起源を探る研究をしている。SHEの発現機構として、不純物散乱に起因する外因性機構及び不純物に依らず多バンド効果に由来する内因性機構が存在する。2007年以降、遷移金属で発現するSHEの起源に注目が集まっていた。そして最近、Hoffmann及び大谷らにより、様々な遷移金属におけるスピンホール伝導度(SHC)が報告された[2,3]。これらの実験結果は、以前の我々の内因性SHCの理論計算と定量的に一致しており、遷移金属におけるSHEは内因性機構が優位である。内因性機構と同様に外因性機構においても「不純物の軌道自由度」が本質的である[4]。この外因性機構は不純物散乱のメカニズムに従って、「skew散乱機構」及び「side-jump機構」に分けられる。Skew散乱項は電気抵抗の逆数に比例するので、低抵抗領域ではSHCが発散的に大きくなる。すなわち、高効率で電流からスピン流へと変換することが可能になるため、注目を集めていた。これとは対照的に、side-jump機構はあまり研究されてこなかった。今回我々はこのside-jump機構を詳細に解析し、内因性項との間に非自明な関係を見出した。本研究で得られた関係を近年の第一原理計算に基づくSHEの研究結果と比較する[5]。

[1] T.T et al.,PRB 77, 165117 (2008), H. Kontani et al., PRL 102, 016601 (2009).
[2] O. Mosendz et al.,PRL 104, 046601 (2010), PRB 82,214403.
[3] M. Morota et al.,,arXiv:1008.0158.
[4] T. T and H. Kontani, New J. of Phys. 11, 013023 (2009).
[5] M. Gradhand et al., PRL 104, 186403 (2010), S. Lowitzer et al.,PRL 106, 056601 (2011).