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エキシトニック絶縁体における1粒子スペクトル関数
−汎関数くりこみ群法による1次元揺らぎの効果の解明−

土射津 昌久 氏
Masahisa Tsuchiizu
奈良女子大学 自然科学系

2021年11月26日(金) 14:00~ 理学館506
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近年、Ta2NiSe5においてエキシトニック絶縁体の実現が指摘され、多くの注目を集めてきた[1]。角度分解光電子分光法(ARPES) により、価電子バンドの上端がフラット化する様子が確認され、エキシトニック絶縁体の有力な候補と考えられている[1]。さらに、構造相転移温度よりも高温においてバンドのフラット化が確認され[2]、preformed excitonの形成も指摘されている。また、高圧力下においては、励起子相と近接する領域で超伝導も発見されており[3]、新しい超伝導発現機構が期待されている。Ta2NiSe5は、Taの5d電子による2つの1次元的な伝導バンドとNiの3d電子の1次元的な価電子バンドが接近しており、半金属と半導体の境界に位置している[4]。最近の時間分解ARPESによれば、常圧では、半金属側に位置していることが指摘されており[5]、半金属領域においてもpreformed excitonが形成されることが見出された。この系は、1次元的なバンド構造をもつことから、特に高温では1次元特有の揺らぎが期待される。本研究では、半金属領域におけるpreformed exciton形成における1次元揺らぎの効果を明らかにするため、1次元揺らぎを適切に記述することが可能である汎関数くりこみ群法[6]を拡張し、1粒子スペクトル関数を解析した[7]。この解析にもとづき、Ta2NiSe5の高温でのバンドフラット化の機構を議論する。

[1] Y. Wakisaka et al., Phys. Rev. Lett. 103, 026402 (2009).
[2] K. Seki et al., Phys. Rev. B 90, 155116 (2014).
[3] K. Matsubayashi et al., J. Phys. Soc. Jpn. 90, 074706 (2021).
[4] T. Kaneko et al., Phys. Rev. B 87, 035121 (2013).
[5] K. Okazaki et al., Nat. Commun. 9, 4322 (2018).
[6] W. Metzner et al., Rev. Mod. Phys. 84, 299 (2012).
[7] M. Kaneko and M. Tsuchiizu, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 023707 (2021).

*本コロキウムは、第28回QLCセミナーおよび物理教室談話会を兼ねています