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重い電子系におけるトポロジカル絶縁相の解析

吉田恒也 氏
Tsuneya Yoshida
理化学研究所

2015年11月24日(火) 13時30分 理学館614

 近年トポロジカル絶縁体が新たな量子相として見出され集中的な研究がなされている。そこではバルクにおける電子状態のトポロジカルに非自明な構造に起因して試料の端や表面において対称性に守られたギャップレスの状態が発現し、それらはトポロジカル電磁気応答やMajorana fermionの発現の起源ともなっている。

 従来、トポロジカル絶縁体は自由電子系として研究がなされてきたが、強相関系であるf-電子系のSmB6においてもトポロジカル絶縁相の発現が第一原理計算によって提案され[1]、ARPES実験でもギャップレスの表面状態の発現が報告されている[2-4]。一方でf-電子系では近藤効果に起因して低温領域での重い電子の形成や、電気伝導度において特徴的な温度依存性が見られる。これらの物性はトポロジカルな構造がない系でよく知られている事であるが、トポロジカル相の研究のほとんどは絶対零度でなされており、重い電子系で発現するトポロジカル相の有限温度領域での振舞いは明らかとなっていない。また、実験は有限温度領域で行われるため実験的観点からも重い電子系のトポロジカル相における温度効果の解明は重要であると考えられる。

 そこで本研究ではトポロジカル非自明相を発現する重い電子系のモデルであるKane-Mele-Kondo格子[5,6]での温度効果を解析した。解析の結果、トポロジカルに非自明な構造を考慮したDoniach相図に加え、強相関効果によってトポロジカル相が壊された場合においても有限温度領域でトポロジカルに非自明な構造が回復する振舞いを見出した[7]。発表では、この事についてバルクでの輸送量の温度依存性、端状態での一粒子励起スペクトル等を交えて議論する。

[1] T. Takimoto, J. Phys. Soc. Jpn. 80, 123710 (2011).

[2] M. Neupane, et al., Nat. Commun. 4, 2991 (2013).

[3] J. Jiang, et al., Nat. Commun. 4, 3010 (2013).

[4] N. Xu, et al., Phys. Rev. B 88, 121102(R) (2013).

[5] X-Y. Feng, et al., Phys. Rev. Lett. 111, 016402 (2013).

[6] Y. Zhong, et al., Phys. Rev. B 88, 235111 (2013).

[7] T. Yoshida et al., arXiv:1508.07779.