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2次元三角格子上の量子スピン液体状態における素励起

松田祐司 氏
Yuji Matsuda
京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻

2010年10月25日 13時30分 理学館506

絶対零度においても強い量子ゆらぎの効果で長距離秩序を示さない量子スピン液体状態は、長年にわたって研究されてきた問題である。特に高温超伝導体との関係が議論されて以来活発に議論されてきた。このような状態は三角格子、カゴメ格子、パイロクロア格子といったフラストレーションを持つ系で議論されてきたが、現実の物質ではなかなか実現されなかった。最近最近グラファイト上に吸着したヘリウム3、有機化合物κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3及びEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2において2次元三角格子上で量子スピン液体が実現されている可能性が実験的に示された。最近我々は極低温における 熱伝導度測定によりこれらの有機化合物の低エネルギー励起についての研究を行った[1][2]。講演では最近の2次元三角格子における量子スピン 液体の実験の現状のレビューとともに、EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2の極低温における異常な熱輸送現象と特異な励起モードについて議論する。

[1]M. Yamashita et al. Nature Physics 5, 44 (2009).

[2]M. Yamashita et al. Science, 28 1246 (2010).