skip to main

鉄砒素系超伝導体の不純物効果

大成誠一郎 氏
Seiichiro Onari
名古屋大学工学研究科

2009年7月24日(金) 16時00分

超伝導転移温度Tc=26KをもつLaFeAsOxF1-xが発見されて以来[1]、鉄砒素系の超伝導ギャップの対称性に関する研究は実験・理論の両面から集中的になされている。現在、全ての実験を説明できるような超伝導対称は存在していないが、超伝導体における非磁性不純物効果は超伝導対称性に対して重要な情報を与える。実際、鉄砒素系超伝導体においてFeの17%をCoに、また40%をRuに置換した場合にも超伝導が生き残ることが分かっている。[2,3] これは銅酸化物高温超伝導体において、数%のCuを他の元素と置換した場合に d波超伝導が破壊されてしまう結果と対照的である。 我々は第一原理計算によって得られた、鉄砒素系超伝導体の5軌道モデルに T-matrixの手法を用いて、非磁性不純物効果の研究を行った。結果として、バンド間で符号を変えるフルギャップs+-波の場合、バンド間の不純物散乱の効果でギャップ内に状態密度が形成され、 1%の不純物に対しても超伝導転移温度が大きく減少することが分かった。[4]  したがって、鉄砒素系超伝導体における非磁性不純物効果の結果は符号反転のないフルギャップs++波を示唆する。

[1] Y. Kamihara, T. Watanabe, M. Hirano, and H. Hosono, J. Am. Chem. Soc. 130, 3296 (2008).
[2] L. Fang, et al., arXiv:0903.2418.
[3] W. Schnelle, et al., Phys. Rev. B 79, 214516 (2009).
[4] S. Onari and H. Kontani, arXiv:0906.2269.