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開放型量子ドットにおける非平衡電流:多電子散乱状態の厳密解を用いた解析

西野 晃徳 氏
Akinori Nishino
東京大学生産技術研究所

2009年5月8日(金) 13時30分

相互作用共鳴準位模型と呼ばれる開放型量子ドットに対して,厳密な多電子散乱状態を構成し,これを用いて,系に有限の電位差を与えたときの電流(非平衡電流)を解析的に計算した[1].この模型は近年,微細加工技術の発達により,実験的にも大変活発に研究されているメゾスコピック系の一つをモデル化したものである.本研究ではこの系を開放量子系として扱い,ドット付近に電子間相互作用が存在する状況で,多電子散乱状態の厳密解を得た.この散乱状態の注目すべき点は,自由電子平面波として入射される状態から,ドットでの散乱により,多体束縛状態が現れることである.この多電子散乱状態は,厳密解の手法としてよく知られるベーテ仮説法[2,3]では構成できない新しい解である.また,入射される電子は,フェルミ分布で特徴づけられる左右の電子溜において十分熱平衡化されているとして,有限バイアス下での非平衡電流を解析的に計算した.得られた電流電圧特性は,相互作用に関する摂動計算[4,5],数値計算[6]の結果と定性的に一致した.

[1] A. Nishino, T. Imamura and N. Hatano, to be published in Phys. Rev. Lett.
[2] V. M. Filyov and P. B. Wiegmann, Phys. Lett. A 76 (1980) 283.
[3] P. Mehta and N. Andrei, Phys. Rev. Lett. 96 (2006) 216802.
[4] B. Doyon, Phys. Rev. Lett. 99 (2007) 076806.
[5] A. Golub, Phys. Rev. B 76 (2007) 193307.
[6] E. Boulat and H. Saleur and P. Schmitteckert, Phys. Rev. Lett. 101 (2008) 140601.