中岡宏徳 氏(2018/10/02)

鉄系超伝導体におけるネマティック秩序と超伝導発現機構の研究

中岡宏徳
Hironori Nakaoka

名古屋大学 大学院理学研究科
2018年10月2日(火) 10時30分 理学館614

  鉄系超伝導体は多くの場合、磁気転移とネマティック転移を示し、回転対称性が自発的に破れる。電子・ホールドープなどによりネマティック秩序相に隣接して超伝導相が現れるためネマティック相と超伝導の関係が盛んに研究されている。

 我々の研究目的はネマティック秩序と超伝導発現機構を統一的な理論で解明することである。鉄系超伝導体の中でも詳細に研究されている物質の一つであるBaFe2(As,P)2について研究を行った[1]。まずself-consistent vertex correction 理論(SC-VC理論)[2]によりバーテックス補正を考慮して軌道揺らぎ、スピン揺らぎを計算したところ、実験的相図に整合する強的軌道揺らぎと反強的スピン揺らぎが発達した。次に結合定数に対するバーテックス補正を考慮した超伝導ギャップ方程式を解いた。その結果、3z2-r2軌道で構成されたホール面上に水平ノードを伴わないノーダルS波を得た。これは角度分解光電子分光(ARPES)実験[3]と整合する。電子面に現れるノードは角度分解熱伝導度測定[4]などから指摘されているループノードに対応するものである。

 以上の研究により、BaFe2(As,P)2のネマティック秩序と超伝導発現機構を統一的な微視的理論により説明することに成功した。同様の手法で解析したLiFeAsの超伝導ギャップについても議論する予定である。

[1] H. Nakaoka, Y. Yamakawa, and H. Kontani, Phys. Rev. B 98, 125107 (2018).
[2] S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 109, 137001 (2012).
[3] T. Shimojima, et al., Science 332, 564 (2011).
[4] M. Yamashita, et al., Phys. Rev. B 84, 060507(R) (2011).