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磁場中固体電子の量子論

伏屋 雄紀_
Yuki Fuseya
電気通信大学 基盤理工学専攻

2020年10月23日(金) 10:30~ (オンライン*Zoomを使用して実施します)

※本コロキウムは 第16回QLCセミナー、及び 特別講義談話会を兼ています。

磁場は物理学のみならず,自然科学において極めて基本的で重要な存在である.しかし身近な存在であるはずの磁場は,量子の世界では未だ解明されない多くの謎を生み出す源泉でもある.金属や半導体中の電子は,磁場によってエネルギーが量子化(ランダウ量子化)される.そのこと自体は古くから知られていたが,量子化の間隔や規則性は物質によって様々に異なり,それを正確に(量子的に)計算することは現代においても困難であった.

近年,固体における相対論効果(スピン軌道結合)が,トポロジカル量子現象との関連性も含め,大いに注目を集めている.研究が進むにつれ,相対論効果とランダウ量子化との関係性が従来理論では全く理解できない,という問題が顕在化してきた.この問題を解決するために,磁場中固体電子の量子化エネルギーを正確に計算する理論が求められていた.

今回我々は,一見何の関係もないハイゼンベルクの「行列力学」が,ランダウ量子化の計算に転用できることを発見し,それを基に量子化エネルギーを厳密に計算出来る理論手法(π-matrix法)を開発することに成功した.この手法をディラック電子系の典型として知られるPbTeに適用し,相対論効果とランダウ量子化の新しい関係性を見出した.

集中講義の一環として,ランダウ量子化など磁場中電子の入門的内容から最新の研究までを紹介したい.

参考文献
YF, Z. Zhu, B. Fauque, W. Kang, B. Lenoir, and K. Behnia, "Origin of the large anisotropic g-factor of holes in bismuth", Phys. Rev. Lett. 115, 216401 (2015)
Y. Izaki and YF, "Nonperturbative matrix mechanics approach to spin-split Landau levels and the g-factor in spin-orbit coupled solids", Phys. Rev. Lett. 123, 156403 (2019)