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ヘリカルマヨラナ準粒子における多極子理論

小林伸吾
Shingo Kobayashi
名古屋大学 高等研究院 工学研究科

2019年1月8日 13:30~ 理学館614

トポロジカル超伝導体は非自明なトポロジカル不変量を持つ超伝導体であり、超伝導表面にマヨラナ粒子の性質を満たす準粒子(以下ではマヨラナ準粒子)が現れる[1,2]。マヨラナ準粒子は質量ゼロのマヨラナ粒子と同様な性質を有し、非可換統計性のような非自明な物性を示す。この性質より、安定なトポロジカル量子計算の量子ビットとして応用できることが指摘されている。

近年、トポロジカル物質の発見と共に、ドープしたトポロジカル物質において様々な時間反転対称性を持つトポロジカル超伝導体が提案されている[2,3,4,5]。時間反転対称なトポロジカル超伝導体の表面にはマヨラナ準粒子のクラマース対から成るヘリカルマヨラナ準粒子が現れる。興味深いことに、電磁場応答が存在しないマヨラナ準粒子と異なり、ヘリカルマヨラナ準粒子では電磁場応答が存在する[1,2,6]。しかし、ヘリカルマヨラナ準粒子の電磁場応答の包括的な研究は未だされていない。

本講演では、3次元の時間反転対称性を持つトポロジカル超伝導体に焦点を当て、ヘリカルマヨラナ準粒子の電磁場応答の一般的性質について述べる。特に際立った性質として、我々はヘリカルマヨラナ準粒子の磁気多極子の既約表現とクーパー対の既約表現が結晶群の下で一対一対応することを明らかにした。本結果はヘリカルマヨラナ準粒子の磁場応答から超伝導体中のクーパー対の対称性を推測できることを意味し、トポロジカル超伝導体の発現機構解明に役立つと考えられる。

[1] T. Mizushima, Y. Tsutsumi, T. Kawakami, M. Sato, M. Ichioka, and K. Machida, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 022001 (2016).
[2] M. Sato and Y. Ando, Rep. Prog. Phys. 80, 076501 (2017).
[3] SK and M. Sato, Phys. Rev. Lett. 115, 187001 (2015)
[4] T. Hashimoto, SK, Y. Tanaka, and M. Sato, Phys. Rev. B 94, 014510 (2016).
[5] T. Kawakami, T. Okamura, SK, and M. Sato, Phys. Rev. X 8, 041026 (2018).
[6] Y. Xiong, A. Yamakage, SK, M. Sato, and Y. Tanaka, Crystals 7, 58 (2017).